ゴムボくらぶです
福岡県北九州市のMさんからトーハツ2馬力の修理依頼をいただきました。
海上で突然エンジンが止まってしまい、以後二度とエンジンが掛かることは無かったというトーハツ2馬力
帰港するのが大変だったようです。
一体海上で何が起こってしまったのでしょう!?
では、見ていきましょう
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製造年月:29年10月
型式:3BV(MFS2B)
トーハツ2馬力・故障の原因を探る
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まず、分解前にスターターロープを引っ張ってみると全く圧縮がありません。
コンプレッションゲージで圧縮を図ると0の位置を指します。
トーハツ2馬力の圧縮圧力の規定値は9です。
これは、キャブレターとかそんな単純な原因ではないようです。
過去、トーハツ2馬力でロッカーアームが割れて圧縮が無いという事例がありましたので
まずヘッドカバーを開けてみます。
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ロッカーアーム異常無し
吸気・排気と各クリアランスを計測してみると排気は規定値内でしたが吸気のクリアランスが異常に広いです。
これはかしい。。。
吸気バルブに原因がありそうです。
ちなみにロープを引いた時にキャブからシュコシュコと圧縮漏れの異音がしていましたので、こういったところからも吸気系に異常があると判断できます。
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エンジンの中身を見ていきましょう。
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左側の黒い物体はスリンガーという名称でエンジンの回転数と同調して回転し、オイルを散布させる役目をしています。
強制的に吸い上げるオイルポンプなどは無く水車のような構造になっています。
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どんどんバラしていきましょう。
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さぁ、いよいよバルブまで到達しました。
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ん!?
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やはり。。。
何か異物があります!
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バルブに異物が挟まっています。
これじゃあ綺麗にバルブが閉じきらないので圧縮0になるのも当然。
で、この異物は一体何だろう??
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コレ、正体はチョーク扉の破片です。
扉が無くなっており全くありません。
扉が割れてエンジン内部に吸い込まれバルブに挟まって不動になったという状況ですね。
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バルブの形がくっきりとついています。
熱で溶けていますね。
私が思うにトーハツ2馬力のチョーク扉はプラスチック製ですが劣化で割れたということはまず考えにくく、こうなるきっかけとなる割れがあったと思います。
例えば、キャブレターを取り外して清掃をする際にうっかり地面に落としてしまうとチョーク面が地面側だった場合は簡単に扉が割れてしまいます。
扉は開けた状態だとキャブから出ていますからね。
割れや亀裂がある状態でそのまま組んだんじゃないかな?と推測します。
キャブから異物を吸い込んでしまうとエンジン内部にまで行ってしまい修理するにはピストンまで全部バラしないといけません。
ちょっとした事が大変な事態を招きますので異物の吸い込みには十分注意しましょう。
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幸いにもバルブに曲がりは無かったので吸気バルブ・排気バルブ共に当たり面の擦り合わせをして再組付けをします。
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擦り合わせバッチリ!
エンジン内部はこれで組み上げます。
クランクケースヘッドのメンテナンス
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クランクケースヘッド
エンジン下ろした際には必ずやっておきたいメンテナンス箇所です。
ただ、私の考察結果ではこの部分は単に消耗部品を交換するだけじゃ長期に渡って良好な状態を維持するには不十分だと分析します。
なので、良好な状態が長持ちするよう消耗品交換+第二のオリジナル対策も行って組み上げました。
これで長持ちします。
インペラ交換
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恐らく1度も交換していないであろうインペラ
塩嚙みが凄まじかったですが、折れないようベストを尽くし何とか無事に4本とも緩めることができました。
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ネジ山を綺麗に清掃して
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塩嚙み防止対策をして組み上げます!
何年先でも次回は塩嚙み無しで分解できますョ。
シフトレバーのオーバーホール
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シフトレバーが固いので。。。
というよりここまでバラしたら当然シフトレバーも分解清掃しておきます。
内部はこの通り塩が溜まっています。
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動いてもなかなか抜けないトーハツ2馬力のシフトレバー
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グリスニップルからの注油が全くできないので中を覗いてみたらこの状態。
塩まみれです。
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グリスニップルはボールが固着してダメになっていたので交換しました。
このニップルは純正品よりキャップ付きの社外品の方がよいですね。
写真はカバーを外した状態ですがカバーキャップ付きの社外品を取り付けました。
その他の作業
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●燃料フィルター清掃
●キャブレター交換
●タペット調整
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●シャーピン交換
●エンジンオイル交換
●ギヤオイル交換
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試運転
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【冷間始動】チョークを引いてSTART位置にて2回で始動
【温間始動】RESTART位置にて1回で始動
【吹け上がり】良好
【検水】良好
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圧縮:適正値
交換した部品
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ご利用ありがとうございました。
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