福岡県中間市・Aさんよりマーキュリーシープロ9.8馬力の修理及びメンテナンス依頼をいただきました
製造年月:31年2月
型式:3K9
では、見ていきましょう
息継ぎの原因を探ってみる
今回で自社入庫2機目となるシープロ9.8馬力です
今回のシープロ9.8馬力はAさん自身でキャブレターを清掃してから高速域で息継ぎするようになったとのことです。
負荷を掛けた実走行でもバケツ運転でも空ぶかしで息継ぎするとのことなのでまずはエンジンを始動してみます。
するとバババババーーーと息継ぎするように吹け上がりながら高回転まで上がります。
第一印象としてはこれキャブではなく電気系に問題があるではないのだろうか?
と思いました。
とはいえ、キャブを清掃後から高回転域で息継ぎするようになったとのことなので、取り敢えずキャブを清掃してみることにします。
キャブレターの清掃
今回、船外機本体についているキャブレターとは別にもう1機キャブレターをお持ち頂きました。(写真のキャブ)
このシープロ9.8を購入する前に同型のトーハツ9.8馬力を使っておられたらしく予備パーツがあるとのことです。
まずはこちらのキャブから清掃してみます。
バラバラと分解します。
フロート周辺に青かびが出てます
フロートピンを止めているネジですがサビサビ状態です。
各経路がどういうふうに繋がっているかを確認しながら確実に清掃していきます。
ジェット類も穴を確認しつつしっかり清掃
フロートピンのネジも取り換えました。
さぁこれでどうだ!
と、キャブをとり付けエンジンを掛けてみるとなんと全く変わってませんorz
やはり電気系なのか!?
次は機体についている方のキャブを清掃してみます!
機体についていた方のキャブの中は綺麗なもんで汚れもありませんでしたが、こちらも完璧に清掃して取り付けてみます。
そしてエンジンを掛けてみるもまたまた全く変わらず。。。
パイロットスクリューは通常の調整値でBESTな位置に
合わせています。
空ぶかしをするとバババババーーーーとなりながら回転数が上がります。
回転数自体は上がるんですけどね。
キャブの清掃は完璧ですのでこれはやはり電気系の不具合なのか!?
それぞれのキャブを更にもう1回づつ清掃して試運転をしてみますがやはり変わりません。
同じ状態ならば内部が綺麗な方のキャブを取り付けてやっていきます。
電気系を考えてみる
リークはないか?
プラグにちゃんと火が飛んでいるかなどを調べてみます。
プラグに問題は無くCDIが悪いのだろうか?ということも頭に浮かびますが
しっかりと強い火花が飛んでいます。
点火タイミングも見てみますがこれも問題ないよう。
原因は電気系っぽいと思いつつも内心31年製でまだあまり使っていないことを考えると電気系がイカれるというのは正直ちょっと考え難い。。。
圧縮を計ってみる
ここでちょっと心臓部となる圧縮が正常かどうかを計ってみます。
1番(上側)約10kg/cm2
正常です。
2番(下側)約10kg/cm2
こちらも正常です。
圧縮に問題はありませんでした。
やはりキャブに原因があるのか?
キャブを触ってからということなので、やはりキャブに何らかの原因があるのだろうか?
燃料系に問題があるとしたらこれは濃い方の症状となります。
パイロットスクリューを通常のBEST調整値より少し締め込んでみます。
すると、少し症状が緩和されました。
試しにもっと締め込んでみると高回転でも息継ぎが無くなり気持ちよく吹け上がります。
原因は燃料系だったか。。。
取り敢えずこれで、症状の要因が燃料系であることが分かりました。
ただ、ここまで締め込むと明らかに締め過ぎで実走行では不調になると思われ、冷間時の始動性がかなり悪くなります。
個体差もあるのかもしれませんが、このパイロットスクリュー調整はかなりシビアです。
360°を1/16ぐらいの細かい間隔で調整してるぐらい。。。
通常の調整値だともう少し開けるんだけどなぁ~
2ストなので構造上、綺麗に燃焼することはできないのはわかります。
機種別の傾向によっては空吹かしだとかぶり気味になるということもあるでしょう。
ただ負荷を掛けた実走行では綺麗に吹けないといけません。
シープロ9.8を相当数触っていないので機種別の傾向がちょっと分からないのですが、その他に問題となるところが無いかもう少し探ってみます。
リードバルブを点検してみる
燃料が行き過ぎてるということも考えらられるのでリードバルブを点検してみます。
燃料供給の弁となるリードバルブ
しっかりと弁の役目を果たしており全く問題ありませんでした。
パイロットスクリューをさらにシビアに調整していく
各パーツを点検するも故障している箇所は無く要因はパイロットスクリュー調整だと判断しました。
Aさんにお話しを聞いたところ、キャブを清掃した際にパイロットスクリューは触らないように気をつけていたようです。
しかし、先程も書いた通りこのキャブのパイロットスクリューはほんの少し動いただけでも状態がゴロっと変わります。
非常にシビアです。
清掃してて気づかぬうちに少し動いてしまったということも考えられます。
アイドリングでの空吹かしで息継ぎしないとこまで締め込むと不調になるのは目に見えてます。
狙うストライクゾーンは空吹かしでは少し息継ぎするものの負荷を掛けた実走行では綺麗に吹け上がる調セッティングです。
始動性との兼ね合いを考えながら。。。
試運転
【冷間始動】チョークを引いて3~4回で始動
【温間始動】アイドリング位置にて1回始動
【吹か上がり】始動性も考えてギリギリのラインで調整していますので空吹かしで少し息継ぎします。
●こちらでは実走行での確認ができないため、Aさん負荷を掛けた実走行での結果をまた教えてください。
宜しくお願い致します。
追記:後日Aさんから連絡があり海で実際に走ってみて息継ぎもなくなり絶好調だったと連絡がありました。
ご依頼ありがとうございました。
マーキュリーシープロ9.8馬力・ヘッドボルトがぁー【福岡県福岡市・Hさん】