ゴムボくらぶです
兵庫県丹波篠山市のSさんからマーキュリーシープロ9.8馬力のメンテナンス依頼をいただきました。
2馬力から9.8馬力にパワーアップするということです!


製造年月:19年2月
型式:3K9
マーキュリーシープロ9.8馬力のメンテナンス

シープロ9.8馬力といえばヘッドカバーのボルトが鬼門です。
このボルトに関しては船外機を送っていただく前に事前にメールでお話をさせていただいており、固着していた場合は状況に合わせてお客様と話し合い臨機応変に対処することになっています。
では、各部をチェックしていきましょう。



カウル内部に何故か砂がたくさん入っています。
う~む、錆や腐食の状況を見ると水没歴があるかもしれません。
しかし、幸いにもエンジンを掛けてみると調子は良いようです。

さて、問題のヘッドカバーのボルトですが残念ながら11本全て固着しています。
こういった場合はオーナーさんと相談してからどうするか決めますので、ボルトが捻じれるまでは力を入れません。
M6のボルトが捻じれずに緩む締まり具合は把握しており、その範囲内で固着しているかどうかを判断します。
現在の冷却状態がどんな状況なのかを良く考察します。
サーモスタットは開閉しているのか?
閉じたままなのか?
開いたままなのか?
サーモスタット通過後のパイロットウォーターで判断します。
すると、どうやらサーモスタットが開いたままのよう。

何とかボルトが緩められないものかとエンジンを下ろしてできる限りのことを試してみましたが全くダメです。
無理やり回すと確実に全部折れます。
これを正式に修理するとなるとシリンダーブロック交換となりメンテナンス代金は10万コースを覚悟しないといけません。
「インペラを交換して水が回るだけではメンテナンスではない」
と言われる方もいます。
シリンダーブロックを交換してくれと言われれば交換しますがメンテナンス代金も跳ね上がります。
お客さんそれぞれの考えもありますので、個人の拘りだけで勝手なことはできないのです。
お金を出すのはお客さんですからね。
サーモスタットは閉じたままだとオーバーヒートするので使えませんが、開いたままは取り敢えず使うことができます。
サーモスタットが付いている機体はちゃんと開閉するのが勿論理想ですけどね。
サーモスタットの役目は冷間時は弁を閉めて早くエンジンを温め、ピストンを膨張させシリンダーとのクリアランスを適正に保つことです。
ちなみに、マーキュリーの2馬力2ストや5馬力の2ストは元々サーモスタット自体がついてなく冷却水は流れっぱなしでこういった船外機もあります。
このような状況を踏まえてSさんに現在の状況をお伝えしたところ、サーモスタットに関してはそのままでお願いしますというお返事でした。
同機の新品購入も視野に入れておられるようです。


サーモスタットを通過した冷却水は画像一番左側の真ん中の長丸の穴から外に出ます。

その他の箇所を見ていきます。
付いていたインペラはこのような状態でした。

シフトレバーのOリングも交換しておきましょう。

新品のインペラ

キャブレターの清掃をしておきます。


この穴はパイロット系統で主にエンジン始動に影響します。

ジェット類も綺麗に清掃

燃料フィルターはゴミが溜まっていますね。

左:新品
右:古いやつ

外部タンクの中も清掃します。
この中にもフィルターがあるのでもちろんこちらも清掃します。

外部タンク内部から出た汚れ

外部タンクのエンジン側コネクターからのガソリン漏れがありましたので修理しました。

配線もチェックしときます。

端子が簡単にボロっと折れました。
こちらも修理。

配線を止めるクランプの腐食が激しかったので交換しました。
その他の作業


トリムタブは交換しなくても良かったですが、一回外してネジ穴を綺麗にしておきます。
こうすることで後にオーナーさんが外そうとしたと時に塩嚙みしているという状況にならないよう極力回避しておきます。
●プラグ交換
●ギヤオイル交換
●各部グリスアップ
●可動部調整
試運転

【冷間始動】チョークを引いて2回で始動
【温間始動】1回で始動
【検水】良好
【吹け上がり】良好
*パイロット調整・アイドリング調整

交換した部品

ご利用ありがとうございました。
マーキュリーシープロ9.8馬力 ・ヘッドボルトの固着問題解決か!?【愛知県豊川市Tさん】