こんにちは、D2です
福岡県北九州市在住のおかちんさんからマーキュリー・シープロ15馬力のメンテナンス依頼を頂きました。
おかちんさといえば、ボート釣り動画でお馴染みの人気ユーチューバー
このブログを見てくれている方はご存知の方が多いと思います。
おかちんさんのボート釣り動画はその人柄も手伝って何回見ても楽しめますよね。
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ギヤ周りの点検・インペラ交換、キャブオーバーホール、その他不具合があれば全てやっておいてほしいとのことでご依頼頂きました。
前回、他所でギヤ関係を分解後、ハンドルを左右どちらかにいっぱいに切った時にギヤ抜けするようになったとのこと。
ギヤ関係、分解して調整等も含め点検してみます。
型式:15MA
製造年:1999年
2馬力以外を扱うのは初めてなので、私自身も勉強になります。
製造から20年経っていますが、使用歴が少ないらしく非常に程度が良い船外機です。
マーキュリー/シープロ15馬力・ロアケース分解
まずは、ギヤ関係からいきます。
ロアケースを分離
シフトレバーは最上部の連結部分がロック構造になっております。
この金属ケースの中にインペラが入っています。
*右側のシフトレバーから繋がるロッドはクルっと回らないように注意が必要です。
このロッドはネジ山によって全長の長さの調整になっておりますので、回ると長さが変わってしまいシフト調整が狂ってしまいます。
ロアケース内、海水混入により白濁有り
ギヤオイルに海水が混じり白濁しています。
ドライブシャフト側オイルシール2個、ペラ側オイルシール2個、Oリング交換
【悲報】ペラのボスを外すには特殊工具(SST)が必要だった
よくあるタイプとしては上下に頭10mmのボルトがあってそのボルトを外せば分解できるのですが、これはちょっと構造が違うようでボルトがありません。
調べてみると、ボス奥にある3か所の爪に特殊工具(SST)をかまして外すようです。
特殊工具(SST)が無い・・・
これは困った
どうするかと考えた末、自作で特殊工具を作ることにしました。
販売されている特殊工具もきっとこんな形のはず。
この自作工具を使って回すと無事分解する事ができました。
*ボス部分は逆ネジになっていました。
ギヤ分解
写真のOリングも交換します。
ペラ側のオイルシールはこの部分に2重でオイルシールが入っています。
前進・後進ギヤの構造
ギヤ関係に問題が無いかを点検します。
【前進・後進のギヤ構造】
エンジンを掛けると、ピニオンギヤ・前進用のギヤ・後進用ギヤ、この3つは常に回ります。
前進用のギヤ・後進用ギヤはピニオンギヤを挟んで前後にあるので構造的に逆回転しているのが分かると思います。
ニュートラルの状態では、前進用のギヤと後進用ギヤは空転しておりプロペラシャフトに動力は伝わっていません。
クラッチ操作をすることでシフトロッドがドッグクラッチをスライドさせ、前進・後進どちらかのギヤの動力をプロペラシャフトに伝達します。
*上の写真は前進ギヤとドッグクラッチが嚙み合っている状態。
ドッグクラッチの内部にはバネが入っていますのでキーで押していない状態だと前進ギヤと噛むという構造
シフトロッド先端についているキー部分
上から、後進位置・ニュートラル位置・前進位置となります。
ニュートラル位置ではドッグクラッチがどちらのギヤとも嚙み合わない状態となり、シフトロッドが一番下までがることで、ドッグクラッチを後進ギヤまでスライドさせます。
先程書いたように、前進用ギヤと後進用ギヤは逆回転する構造なので、ドッグクラッチの位置次第でペラを反対に回すことができるというわけです。
>このロッドはネジ山によって全長の長さの調整になっておりますので、回ると長さが変わってしまいシフト調整が狂ってしまいます。
この仕組みを見ると、先程書いたこの上の文章の意味が分かるかなと思います。
この構造からすると、キーの調整基準は前進レンジで決めます。
前進レンジでしっかりドッグクラッチと前進ギヤが噛むようにキーの位置を調整します。
備忘録として書いておくとおかちんさんの船外機は一番締め込んだ状態から4回転戻しの位置がBESTでした。
前進レンジ、ペラ逆回転時の負荷を逃がすためのラチェット構造
画像内に記載している通りペラ正回転時は90°の位置でギヤが噛み、逆回転への負荷が掛かった時にカチカチと音を立ててギヤを外し負荷を逃がす構造になっています。
*ギヤが入っている時のみ
このようなラチェット構造はなっているものと、なっていないものがあるのですがシープロではなっていました。
なぜこのような構造になっているのかというと、ボートを高速で前進させていてキルスイッチで停止した際に(シフトは前進レンジのまま)エンジンを切っても多少ボートは惰性で進みます。
その時の水流はペラを逆回転させるほうに負荷が働きます。
その逆回転の負荷をクランクシャフトへ伝えないための構造なのです。
簡単に言えばクランクシャフトの保護といった役割ですね。
内部にギヤが抜けるような問題が無いか、ギヤ欠け等無いか、くまなくチェックしてみましたが、問題はありませんでした。
あとは、考えられるのはここ
シフトロッドに取り付けされているこのネジ止めパーツはロアケースを分離する際に取り外す必要があるので、前回他所で分解した際には取り外しているはず。
このパーツは取り付け位置が調整になっています。
このパーツを上にあげすぎて取り付けしていたとすると、ハンドルをいっぱいに切った際にギヤ抜けが起こる可能性があります。
適正位置に取り付け致しました。
シープロ15馬力・インペラ交換
インペラベースに入っているドライブシャフト側のオイルシールです。
こちらも2重でオイイルシールが入っています。
隣のシフトロッド用のシールも交換
新品のインペラとワッシャー2個です。
真ん中にあるワッシャーがインペラの上下に入っているはずですが、分解時は何故か下側しか入っていませんでした。
作業に伴うガスケット類も交換。
シープロ15馬力・サーモスタット点検
サーモスタットの単体テストを行いました。
塩害も少なく動作に問題はありません。
エンジン内部水路も綺麗な状態でした。
シープロ15馬力の検水はサーモスタットの直ぐ横についており、サーモスタットが開く前はチョロチョロとしか水が出ませんがサーモスタットが開くと勢い良く出ます。
構造的にこれで正常な動きです。
シープロ15馬力・キャブレターオーバーホール
シープロ15馬力はキャブレター内のガスケット単体の販売が無いため、分解する時にはガスケットセットを購入することになります。
これが結構高価・・・
ガスケットセットはガスケット一式の他に、スプリングやフローバルブ等モロモロがセットになっています。
分解して清掃及び消耗品・ガスケットの交換をします。
ダイヤフラムのオーバーホール
リードバルブ、開閉に問題ありません。
シープロ15馬力・燃料フィルターの点検&清掃
燃料フィルターの点検
下部にゴミが少し溜まっていました。
清掃してOリングは交換
シープロ15馬力・アノードの交換
アノードに劣化が見られましたので交換しました。
シープロ15馬力・試運転
チョークを引いて1〜2回で始動して、吹け上がり好調です。
15馬力なので、少しアクセルを開けるとパワーが凄いです。
ギヤを前進、後進と入れてみて不具合が無いか確認します。
バケツ運転ですのでギヤを入れた状態でハンドルをいっぱいには切ることはできませんが、しっかり点検して組んだのでギヤ抜けは無いでしょう。
シープロ15馬力・交換部品
今回、整備した意外の部分は問題ありませんでした。
ご利用ありがとうございました。
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