ゴムボくらぶです
福岡県みやこ郡Nさんからトーハツ5馬力のメンテナンス依頼を頂きました。
ありがとうございます。
ニュートラルでペラが回るということでお持ち込み頂きました。
去年の11月にエンジンを掛けた時には回っていなかったとのことです。
これは一体どうゆうことなのか!?
では、見ていきましょう
型式:3H6(MFS5A)
製造年月:19年6月
ニュートラルでペラが回る!これは一体!?
ニュートラルでペラが回るということですが、まずは症状を確認するためにエンジン始動してみます。
すると確かにニュートラルでペラが回っています。
ペラを良く考察してみますと、回っている向きは左回転です。
ギヤを入れた時のように力強く回っているのではなく水流が起きるほどではありません。
更に考察していくためにペラに板を当てて回転を止めてみます。
すると軽い力でペラは止まりペラの動きを止めてもエンジンの調子に変化は無しです。
ここでまずギヤの構造説明します。
エンジン始動と共にニュートラルの状態で前進用ベベルギヤ・後進用ベベルギヤともに連動して回転しています。
前進ようベベルギヤは右回転・後進用ベベルギヤは左回転。
ニュートラルだとそれぞれのギヤは回転はしているものの、プロペラシャフトに動力は伝えていないという状態です。
シフトレバーを入れることでドッグクラッチが動力を伝えプロペラが回ります。
このような構造でありますが、ペラが回っているのは左回転ゆえに影響しているのは後進用ベベルギヤだということが予測されます。
シャフト中央にあるのが後進用ベベルギヤ。
正面に見えるのが前進用ベベルギヤ
後進用ベベルギヤを取り外しました。
この穴の中にプロペラシャフトが入っておりギヤと一緒に左回転で回っているという状況です。
プロペラシャフトと接触する内側の部分には金色のカラーのようなものが入っておりこれがベアリングの役目をしています。
ギヤオイルが流れて潤滑するように溝が切っています。
構造的上、後進用ベベルギヤの惰性でプロペラシャフトも共周りしているのではないだろうか?と思いますが、ベアリングの役目をする部分が黒く変色していますので摩耗が多くなっているとか、表面が荒れてしまっているとか、何らかの問題があって滑りが悪くなり共回りしているという可能性も0ではありません。
このベアリングは非常にデリケートな部分ですので、確実な答えを出すにはベベルギヤを新品に交換してみるほかありません。
新品の後進用ベベルギヤ
内側は綺麗な金色です。
注文時に分かったのですがなんとこの部品は現在廃盤になっております。
たまたま運良くアクアライトさんに1個だけ在庫があって注文できましたが、現行型は品番が変わってリニューアルされています。
この3H6の型にはリニューアル版のギヤは適合しないようです。
新品のベベルギヤを取り付けてペラの回転が止まるかどうか?
というところですが、、、
変わらずペラが回りました。
構造上の問題だということが確定で故障ではありません。
では、なぜ11月には回っていなかったのに今は回っているのか?
と思いますよね?
これは外気温が関係しています。
気温が下がるほどギヤオイルの粘度が上がるため、寒いこの時期は惰性で回り易くなります。
気温が上がる春先になったらいつの間にかペラが回らなくなったという状況になっているはずです。
ちなみに、同じ仕組みの先日私がフルオーバーホールしたトーハツ9.8馬力はどうだろう?
とテストしてみたところ、同じようにニュートラルで左回転でペラが回りました。
勿論惰性で回っている程度の回転です。
今回、ベベルギヤを交換しても結果は変わりませんでしたが、交換せずには確実なことをNさんに伝えることはできないと判断したためどうぞご理解いただけたらと思います。
ペラ回転に関してはこれにて完了と致しました。
長くなりましたのでその他の作業はダイジェストとさせていただきます。
その他の作業
●インペラ交換
インペラボルトの塩嚙み防止処理をして組み上げました。
●キャブレター清掃
ジェット類だいぶ汚れておりました。
●サーモスタット点検OK!
サーモスタットケース内部は非常に綺麗でした。
●ブラケットスクリュー交換
これは入庫時にNさんに交換して欲しいと言われていました。
●エンジンオイル交換
●ギヤオイル交換
その他の部分に関しては点検・良好な状態でした。
試運転
【冷間始動】チョークを引いてSTART位置にて3~4回で始動
【温間始動】1回で始動
【吹け上がり】良好
【検水】良好
交換した部品
ご利用ありがとうございました。